日本の将来を左右するほど重要な電気自動車(EV)と全個体Li電池開発の現状

ホンダ Fit EV

2018年6月にトヨタ自動車、日産自動車、ホンダのライバル3社を含めた自動車・蓄電池・材料の各メーカー23社と大学・公的研究機関15法人が連携・協調し、全固体Li電池の実現に向けた課題解決に乗り出したと報じられました。

2022年までに実用化を前提とした大型・大容量の全固体Li電池を用いて、EVへの搭載の可否や量産技術への適合性を含めて評価し、その世界標準化を目指します。

一度、背景や課題・目標についてまとめます。
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日本製EV、先行販売し世界シェア確保を

産業・市場動向(中国の脅威)

国内自動車メーカーは2014年までの世界累計販売で国内自動車メーカーのシェアは EV が約 5 割、PHEV が約 4 割ですが、海外自動車メーカーも積極的に EV・PHEV の開発を進めており、今後は競争激化が予想されます。

一方、車載用蓄電池の2014 年世界市場規模は約 7,000 億円、このうち、日本はLi電池 の市場(約 6,500 億円)で約 70%のシェア、ニッケル水素電池の市場(約 1,300 億円)でほぼ 100%のシェアを確保していました。
ところが、2017年は中国が国を挙げて取り組んでた結果、Li電池出荷量(GWh)トップ10のうち中国メーカーが7社、CATLはパナソニックを抜き初めて世界首位となり、BYDは世界3位となってます。

さらに、現在、日韓メーカーは技術成熟度の高い三元系材料を採用し、グローバル市場ですでに競争優位を確立していますが、中国の地場メーカーはリン酸鉄材料でLIB生産を拡大するものの、電池のエネルギー密度の引き上げや長距離走行の実現が課題となっています。またLi電池の部材や製造設備に関しては開発能力が劣るため、日韓メーカーに比べ依然後れを取っていました。

このような状況下、中国政府は2017年3月に「動力電池産業発展促進行動方案」を公布し、政策支援や産官学連携を通じて、三元系技術の底上げを図っており、 Li(リチウム)電池 セルのエネルギー密度を現在の200Wh/kgから300Wh/kgに引き上げることを目標に掲げています。

日本が競争優位性を確保していくためには、エネルギー密度を飛躍的に向上させた、安全性・信頼性が高い、低コストの革新型蓄電池をより早期に開発し、搭載したEV・PHEV を他国に先駆けて市場に投入していくことが重要です。

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出典:トヨタHP

EV でガソリン車並み実現の最大の課題

現在の EV 量産車に使用されている Li(リチウム)電池 セルのエネルギー密度は 最大150Wh/kg 程度にとどめられており(民生用実力は200~250Wh/kg) 、数百 kgと重い電池パックを搭載しても走行距離は 120~200km と短いです。

EV でガソリン車並みの走行距離を実現しようとした場合、エネルギー密度を現状の 5倍程度まで高める必要があります。

2022年末の全個体Li電池研究・開発の目標

開発した共通基盤技術を基に試作した実セル(容量 5Ah 級)について、下記を満たすことを目標とする
・重量エネルギー密度:500Wh/kg 以上
・体積エネルギー密度:1,000Wh/L 以上
・重量出力密度:100W/kg 以上
・サイクル寿命:100回以上
・環境性:カドミウム、水銀、六価クロム等の環境負荷物質をセル構成材料として大量に使用していないこと
・車両環境への対応:-30~60℃の動作環境温度において変質しないこと
・経済性:貴金属等、高コスト元素を大量に使用しないこと
・安全性:内部短絡、圧潰・過充電時の異常発熱、発火、熱暴走等に対する安全策を講じることが技術的に可能なこと
・充電性:普通充電(6 時間)が可能なこと。急速充電が可能なこと

次世代車載用蓄電池の実用化に向けた基盤技術開発

出典:製造産業局 自動車果、素材産業課 資料

トヨタ自動車、日産自動車、ホンダのライバルが手を組む

数年前から環境問題を背景に欧米を中心にガソリン車から電気自動車(EV)への移行が加速しています。
しかし、一方で走行距離や安全性では汎用性は遠いという現実もあり、爆発的に普及させるには蓄電池の性能向上が鍵になっております。

しかし、蓄電池の性能向上のための開発リスクとハードルは極めて高く、民間企業単独の取組で実現することは困難でした。

そこで、経済産業省は次世代車載用蓄電池として日本が圧倒的にリードしており、安全性の高く(リチウムイオンだけが電荷を運ぶ化学反応になり、マイナスイオンが動かないことから熱問題がない)、充電時間も短い全個体Li電池の実用化に向け、自動車メーカー(トヨタ自動車、日産自動車、ホンダのライバル3社含む)、電池メーカー、材料メーカーの23社と15の大学・研究機関が協力し、共通基盤技術を開発することになりました。(平成30年度予算31億円)

そして、安全性・信頼性が高い、低コストの革新型蓄電池をより早期に開発し、これを搭載したEV・PHEV を他国に先駆けて市場に投入、日本が新技術で世界をリードし、差別化した技術によりうまみのあるビジネスを展開を目指します。

ニッサン リーフ

出典:NISSAN HP

全個体電池の現状について

2011年、LGPS(=リチウム・ゲルマニウム・リン・硫黄 Li10GeP2S12)開発

固体の中をリチウムのイオンが動くという現象を起こさせること、そのものが難しいとされていました。しかし、東工大(菅野了次教授)とトヨタ自動車は2011年に、固体の中でもイオン伝導率が有機電解質に匹敵するセラミックス材料を見つけました。

しかし、この材料を電解質とする全固体型電池を作っても、電流などの出力特性が従来のリチウムイオン電池を凌駕することはできませんでした。

菅野了次教授と全個体Li電池

出典:東工大ニュース 菅野了次教授と全個体Li電池

2016年 Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3とLi9.6P3S12を発見

LGPSの可能性は否定せず、LGPSをもとに高価なゲルマニウムに代わる元素はないかと硫化物系の新物質探索を行ってきた結果、イオン伝導率が有機電解質の2倍という超イオン伝導体Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3を発見、リチウム金属負極の電解質に使える、より安定した超イオン伝導体のLi9.6P3S12も発見。

この2つの超イオン伝導体で全固体電池を作たところ、室温(27℃)で有機電解質のリチウムイオン電池の3倍以上も電流が流れるなど高い出力特性を持っています。さらに有機電解質のリチウムイオン電池の欠点であった低温(マイナス30℃)、高温(100℃)でも安定して充電、放電ができました。

100℃でもマイナス30℃でも動くので、有機電解質のリチウムイオン電池に比べて、(安定して動く)温度範囲が広がります。つまり、それほど厳しい温度管理をしなくても良くなるという点で、設計の自由度は増す可能性があります。リチウムイオン電池は60℃以上になると劣化が進むので、現在のEVは冷却装置などで温度管理をきちんとする必要がありますが、その必要がなくなったところまできています。

また、数分でフル充電でき、急速充放電が可能なキャパシタよりも優れた出力特性を示すことも確認されています。

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最後に

Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3を電解質にした全固体電池は、リチウムイオン電池はもちろん、現在、次世代として注目されるナトリウムイオン電池、リチウム空気電池、マグネシウム電池、アルミニウム電池などとして比較しても優れているとのことです。

ただ、Li9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3の伝導機構の詳細なメカニズムの解明、負極側の耐還元性(電池として量産した場合の負極側の安定性の向上、伝導率が高い半面)に課題が残ってます。

エネルギー密度と容量の関係図

出典:Nature Energy

今回の全個体Li電池開発の現状は牽引してきた東工大(菅野了次教授中心)とトヨタ自動車(加藤祐樹さん中心)の研究・開発内容になりますが、今後はオールジャパンの開発・研究から目が離せないですね。

正直、全個体Li電池で日本が後れをとるということは技術立国日本は落ちていくと思ってるくらいの重大な研究開発になると思ってます。

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CY

1970年長崎県五島生まれ 現在、家族は妻、息子の2人 品川区在住、品川区勤務 好きな作家:池井戸潤、伊坂幸太郎、真山仁 好きなドラマ:救命病棟24時、医龍 好きな映画:グローリー 好きな女優:石田ゆり子、イングリッド・バーグマン 好きなスニーカーメーカー:PATRICK