ノーベル賞2019、医学・生理学賞「細胞の低酸素応答の仕組みと解明」の応用でがん細胞の増殖を抑える研究が!

細胞の低酸素応答

2019年12月8日(日)、NHK「サイエンスZERO」では今週授賞式があるノーベル賞に関する放送。

“科学のノーベル賞、全部やります”ということで、日本人が受賞した吉野彰さんの化学だけでなく医学・生理学分野、物理学の成果内容や裏話について放送されていました。

日本国内のニュースでは吉野彰さんが受賞した化学分野のリチウムイオン電池のことぐらいしか掘り下げて取り上げられてませんが、さすが、サイエンスZERO。

2019 Nobel Prize (medical / physiological field)

出典:NHK

わかりやすく医学・生理学分野についても放送されていましたので、紹介します。
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医学・生理学賞 「細胞の低酸素応答の仕組みと解明」について

グレッグ・セメンザ博士(ジョンズ・ホプキンズ大学)の研究内容と業績

腎臓には、老廃物を排泄するだけではなく、全身の酸素をコントロールする機能が備わっているのです。

その機能のため、腎臓は体内で酸素が不足するとエリスロポエチン(EPO)という物質をだします。EPOは酸素が足りないことを伝えるためのメッセージで、骨髄に届くと、酸素の輸送役である赤血球が増産され、全身により多くの酸素が届くようになるのです。

セメンザ博士は業績は、腎臓の細胞がEPOを作る時にHIF‐1というタンパク質が必要であることを発見したことです。

出典:NHK

HIF‐1は、細胞に酸素が足りない低酸素状態になると増えるタンパク質。

出典:NHK

増えたHIF‐1は核の中に入り遺伝子に働きかけてEPOを作りだすという重要な働きをします。

EPOが骨髄に届き、赤血球が増産されていくと、酸素が増えます。

HIF‐1の役割は終わりますので、HIF‐1を減らす仕組みが必要となりますが、その仕組みを解明した方がもう2人のノーベル賞受賞者です。

ところで、なぜ、腎臓だったのか?

ほとんどの体内の細胞内では特殊な低酸素状態でなくても抑えながらEPOは作られており、低酸素状態になると大量に作ることがされてますが、特に、腎臓は大量の酸素を使っているので、大量の血液が注ぎ込まれるので、何かイレギュラーが起きた時、差分がわかりやすいので、センサーとしての臓器として適していたからなのです。

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ウィリアム・ケーリン博士(ハーバード大学)とピーター・ラトクリフ博士(オックスフォード大学)の研究内容と業績

元々、ある遺伝子が作るVHLという遺伝子を調べていたケーリン博士は細胞内にVHLがなくなると、低酸素状態でなくてもHIF‐1が増えることに気が付きました。

VHLがHIF-1に関係している

出典:NHK

VHLがHIF‐1に関係していることを突き止めたのです。

ラトクリフ博士は酸素が十分にある時、HIF‐1が変化し、VHLと結合することを発見したのです。

HIF-1の仕事終了

出典:NHK

HIF‐1の仕事終了のサインで、酵素がHIF‐1を分解します。

酸素がある時にHIF-1を減らす

出典:NHK

酸素がある時は不要なHIF‐1を減らす仕組みが明らかになったのです。
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「細胞の低酸素応答の仕組みと解明」の応用例

日本では約33万人が人工透析を受けていますが、そのほとんどの人がEPOが生成されにくくなり、放置すれば、命に関わる腎性貧血に陥るのです。

その腎性貧血にならないように低酸素応答の仕組みを利用した、HIF‐1がVHLと結合することを阻害する新薬が2019年9月に日本でも承認され、発売されるということです。

HIF-1が分解されにくくなるので、EPOを作り続けることができるのです。赤血球が増えて、貧血が改善するのです。

この薬の今回のターゲットはあくまでも腎性貧血ですが、将来的には虚血(低酸素)が悪さをする様々な病気、虚血性心疾患、総卒中あるいは下肢の血管が閉塞することによる病気にも臨床応用が広がる期待があります。

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最後に

全ての細胞がHIF-1を作って、そして壊してをしておりますので、腎臓以外にも応用が考えられるのです。

HIF-1は酸素を運ぶ赤血球、酸素を運ぶための管である血管、酸素をもらう臓器・組織のすべてを調整しています。

例外として眼の角膜は血管がないのですが、角膜の中ではHIF-1の活性化が特殊なタンパク質で抑制されているからです。血管を作っていけないところでは作らない仕組みも発達しているということなのです。

 

がん細胞はHIF-1をだして血管を呼び寄せたりするので、がん細胞が大きくならないように、HIF-1の活性化が特殊なタンパク質で抑制できなようにすることの応用が考えられています。

タンパク質を細胞中に入れるのは難しいので、化合物(分子)を用いた薬を考えましたが、異常がない他の臓器や組織のHIF-1の活性化が阻害されということになるので、今はドラッグデリバリーシステム(薬を必要としている細胞組織だけに運ぶ仕組み)が一緒に開発されていかないと厳しいというところが、現状で、今後の研究の課題ということです。

次の記事は同日放送の「サイエンスZERO」の物理学についてアップします。

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CY

1970年長崎県五島生まれ 現在、家族は妻、息子の2人 品川区在住、品川区勤務 好きな作家:池井戸潤、伊坂幸太郎、真山仁 好きなドラマ:救命病棟24時、医龍 好きな映画:グローリー 好きな女優:石田ゆり子、イングリッド・バーグマン 好きなスニーカーメーカー:PATRICK