2021年1月4日(月)のNHK Eテレ「100分で名著」で、カール・マルクスの「資本論」は現在世界を悩ませている問題に150年前から警鐘を鳴らしていた名著ということを紹介していました。

出典:NHK
その150年以上前に書かれた「資本論」の中で描かれているのは今も変わらない資本主義に翻弄される人間の姿。

出典:NHK
今回、”「商品」に振り回される私たち“というテーマについて、ドイッチャー記念賞を日本人初、史上最年少で受賞した大阪市立大学経済学部准教授斎藤幸平さんが指南役として、私たちの生きる資本主義のメカニズム、そしてその落とし穴についてマルクスからのメッセージを読み解意味を伝えてくださってました。
目次
富を商品にし、そして商品の使用価値より価値を重視する資本主義下で振り回される私たち
今、「資本論」を読む意味
今、「資本論」を読む意味について、大阪市立大学経済学部准教授斎藤幸平さんは次のように話をしていらっしゃいました。
30年間グローバル化の中で資本主義が一番いいシステムという考えでしたが、実際に経済や暮らしがいいのか?と客観視してみると、そう思えない状況です。
安定した仕事もなく、気候危機が深まっていっているので、若者たちが、資本主義じゃない別の世界をもっと作った方がいいのではないかということで、アメリカなどを中心に社会主義を支持するようになってきています。

出典:NHK
それは、今まで通り経済成長をどんどんして、豊かになって行こうというやり方だと、一部の企業は利益を上げていきますが、日本では非正規雇用労働者が増えてきているように、貧富の差が大きくなっていることを感じているからなのです。
そこで、もっと技術や富をうまく使えば、みんなが幸福、自由で平等な社会を作れるのではないのかと若い人たちは感じているです。
しかし、一方で、なかなか私たちは資本主義以外の社会を想像できなくなっています。
マルクスの「資本論」は少しでもその想像する力を与えてくれている著書であって、今こそ読む意味があるのではないでしょうか。
「資本論」は150年以上前の書なのですが、当時の社会も今の社会と同じでお金儲けのシステムで、貧富の格差が広がったり、過重労働による過労死や環境問題の悪化についてマルクスは”社会変革の実践の書”として書いたのです。
そして、伊集院さんも「確かに、自分もぼんやりと生きていますが、目の前の金儲け競争が生み出してる不安みたいなものはあると、すごくわかります」「一旦金儲け競争が止まらないと、その先に崖がありそうというのは感じています」「しかし、一旦止まった隙に誰かが儲ける可能性があるということにビビり続けている答えがこの著書にあるなら読みたい」と。
<Sponserd Link>
資本主義下では富が奪われ商品に
「資本論」を読むに当たって抑えておきたい概念”物質代謝論”

出典:NHK
地球上のありとあらゆる生命が行う自然に働きかけて呼吸・摂取・消化・排出するような循環の過程をマルクスは”物質代謝”と読んでいます。

出典:NHK
過剰な森林伐採や化石燃料の採掘を続けているので人間と自然の関係を変えていっており、最終的には気候変動など人間に帰ってくるのです。
そういう矛盾を考えていこうとする概念が”物質代謝”なのです。
「資本論」での”商品”とは、”富”とは

出典:NHK

出典:NHK
人と自然との循環、”物質代謝”。
その中で人だけに特有な関わり方があります。それは”労働”というものです。
野生動物はお腹が空いていたら目の前の実をすぐに食べてしまいます(=本能的な行動)。しかし、人はもう少し熟してからや来年も収穫できるようにするなど、意識的な労働で働きかけます。
そして労働が生み出すのは”商品”。
資本論の冒頭は”商品”に関わる一文からはじまります。

出典:NHK
「資本主義的生産様式が支配的な社会の富は”商品の巨大な集まり”として現れるということ。その裏を返せば、資本主義でなければ社会の富は商品として現れなかったということなのです。

出典:NHK
マルクスはわれわれの考察は商品の分析からはじまると。

出典:NHK
そのマルクスの考える富とは空気・水・森・公演・図書館・知識・文化・技能。コミュニケーション能力などがあります。
資本主義下で私たちは富と商品を混同している
私たちは一般に富と言うとお金、不動産を思い浮かべるのですが、実はそれは私たちが富と商品を混同しているのであって、富としてみんなで共有して発展させていくべきだとマルクスは考えたのです。
ところが、資本主義社会はありとあらゆるものが商品になっていってしまっているのです。
が、富が商品になるとお金がない人ははじき出されてしまうのです。
一見すると今の社会は何でもある(コンビニや通販で手に入る)ように思えますが、それは商品ベースのの事であって、富で考えると、私たちはそれほど豊かになってないのです。
ということで、富が奪われてしまった歴史と続く現在の例については下の動画で詳しく知ることが出来ます。
動画の伊集院さんの公園が有料のフットサルコートになっていく話、非常に腑に落ちます。
物象化が起きている
使用価値と価値の違い
ありとあらゆるものを商品にしていく資本主義。この商品には2つの力があります。
1つ目は人の欲求を満たす力、使用価値です。
水であれば、人の喉を潤すこと。炊飯器はお米を炊けることが使用価値です。
一方で商品が持つ交換できる力をただ価値と呼びます。
全く使用価値が異なるペン1本と水500mlを交換できるとした場合、2つの商品は同じ価値を持つと言います。この商品の持つ価値は市場では貨幣によって価格として表されています。

出典:NHK
資本主義社会は使用価値ではななく、交換できる力、価値を重視するシステムです。
マルクスはこのことに警鐘を鳴らしました。

出典:NHK

出典:NHK

出典:NHK
価値は社会の変化によって変動します。突然高騰し人々が困ることも。
それにもかかわらず、私たちは商品の価値を重視してしまうのでしょうか?
物象化によって人はコントロール不能になっている

出典:NHK
物象化とは人とモノの立場が逆転する現象を言います。
モノのよりも人が振り回されてるようになっているということなのです。
そして物象化によってお金儲けだけに生きる存在に閉じ込められてしまっていくのです。
物象化のおそろしいところはそこなのです。
さらに、物象化の恐ろしいところについて、マルクスが「資本論」で説明していることを上の動画でわかりやすく説明していました。
<Sponserd Link>
最後に
斉藤さんは「マルクスの資本論は解放してくれる力があります」
「私たちが当然と思っていることが、実はよくよく考えると、そんなに当然ではないと教えてくれるのです」「当然じゃないんだったら変えられるはず」
確かに、カール・マルクスの「資本論」を紹介した「100分で名著」の4回のうちの”「商品」に振り回される私たち”の1回目だけを見ただけでも気持ちが解放された感じがしています。
<Sponserd Link>
コメントを残す