渋沢栄一は経営学者ピーター・ドラッカーに高く評価されていた!! その理由は?

渋沢栄一

2021年4月12日(月)のNHK Eテレ「100分de名著」は2021年の大河ドラマの主人公であり、新一万円札の顔にもなる渋沢栄一の“論語と算盤”。

信用で回す経済を追い求めてきた

出典:中京テレビ

“論語と算盤”についての2回目の放送のはテーマは”“信用”で経済をまわせ”でした。この”信用でまわす経済”をキーワードに、拝金主義に陥りがちな資本主義の暴走のブレーキとなるものは何なのかを考えていました。

その第2回目放送の渋沢の”論語と算盤”中の言葉と第1回目の放送で紹介した渋沢の言葉に誰もが気付く矛盾があるという話があるのです。

しかし、あの経営学者ピーター・ドラッカーが渋沢栄一、そして”論語と算盤”を高く評価していたということなんです。

ピーター・ドラッカーが矛盾した”論語と算盤”を高く評価した理由について、今回の指南役守屋敦先生が腑に落ちる説明をしてくださっておりますので、第2回目放送に即して紹介します。

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ピーター・ドラッカーが渋沢栄一、論語と算盤を高評価してくれていてうれしいがなぜ?

渋沢栄一、欧米人が日本人の商業道徳を問題視していたことにショックを受ける

明治35年、渋沢は、夫婦で欧米を巡る旅に。
アメリカの次に訪れたイギリスのロンドンで商工会議所会員から

「日本人は他人に対しての約束を甚だ守らない」「いわゆる、信用が堅固ではない」

「例えば、景気が良くて売れそうだと思うと、注文品を早く引き取るが、これに反して売れそうにもないと注文品をなかなか引き取らない」
「次には少し言うのをはばかれるが、『インボイスを二重に書けと言われる』」「事実のインボイスとそれより安価なインボイスを」「その原因は税金を免れるためである」「『そんな偽りは嫌だ』と言うと『取引を断る』と言うので仕方なくその要求に応じる人もままあるが、これらの行為は誠に心苦しい」

「このような悪弊は、ぜひ渋沢などの力によって矯正してもらいたい」という言葉を聞いて、伝え聞いていたものの、面と向かって苦情を言われた渋沢は大きなショックを受けます。

当時、多くの日本人が信用成らない商取引を繰り返しており、その商業道徳が海外で問題視されていたのです。

渋沢が考える明治時代の一部の商工業者

出典:NHK

日本の商工業者は未だに昔の慣習から抜け出せずに、ややもすれば道徳と言う考えも無視して、一時の利益に走ってしまう傾向がある。これでは困るのだ。
欧米人も常に日本人がこの欠点を持っていることを非難し、商取引においては日本人を完全に信用しないとしない。
これはわが国の商工業者にとって大変な損失であると、渋沢は考えました。

詐欺こそが商業の本質

出典:NHK

実は、明治時代、今でいう通産省のようなところが出している経済白書の冒頭に「商業は規律なく含まれているため、詐欺こそが商業の本質とみなされるようになった」と書かれていたくらい、インチキが蔓延していたのです。

伊集院さん「今の時代、再びそれに近いことが行われているような気がします」「ITのスピード感の中で、わりと詐欺まがいの取引だったりとか、今一瞬儲かったらあとはトンずらでいいみたいなやり方が蔓延しているから」

元々、渋沢が日本に導入しようとしたのが信用で回す経済です。
渋沢は20代後半でフランスに留学しますが、そのフランスでナポレオン3世が行っていた経済政策が(渋沢の導入しようとした信用で回す経済の)元になっているのです。
このナポレオン3世が行った政策には3つの柱があります。

ナポレオン3世の経済政策

出典:NHK

1,お金を回すために金融を整備
2,人とモノの動きを促すためにインフラを整備、
3,お金・人・モノを回せる人材を育てる

この政策で、ナポレオン三世の治世の前半、フランスの経済成長率はヨーロッパNo,1 であり続けたのです。

ナポレオン3世

出典:NHK

そのナポレオン3世の言葉に「正当にして強固な政府は、精神の中にも、また事物の中にも秩序を確立すべきである。では、秩序を確立するとは何か?それは信用と言うものを再びもたらすことだ」というものがあります。

この頃、ヨーロッパではこの政策を実現するための2つの道具が揃っていました。

近代的な株式会社と銀行です。

近代的な株式会社というのは人々が儲けたいという欲望を乗せるための「器」なのですが、それだけでは社会が壊れてしまうので、信用という基盤を作る「器」という近代的な銀行が必要なのです。信用を媒介にしてお金を回すのが近代的な銀行の役割なのです。

信用がないと、経済が回らないということなのです。

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渋沢栄一の商業道徳

明治時代の日本人の商業道徳は、江戸時代の封建制度の影響でまだ未熟だった

江戸時代、日本には有名な商業道徳がいくつかありました。

近江商人の三方の精神

出典:NHK

例えば石門心学という儒教を元にした商業道徳があったり、近江商人が「売り手良し、買い手良し、世間良し」という三方精神を持っていたと言われておりますが、そうではない人も多かったのです。

そういう中で明治になって、近代化や資本主義化が入ってきて、どうしても拝金主義的になってきてしまったのです。「お金を稼いだ奴が偉い!」と。どんどん悪い方が膨らんで行ったんです。

ここで、伊集院さん「スピード感が増した時に、その先のことを考えることを止めるじゃないですか」「『今振り落とされないようにするには、今お金を持たなきゃ』というのは今現代にも近いモノがあると感じている」と。

封建制度の影響

出典:NHK

渋沢は商人たちの道徳の欠ける振る舞いに、江戸時代の封建制度の影響を見ていました。

孔子や孟子の言うところの民、つまり治められる側の一般民衆は、上からの命令を素直に聞いて、村や町から課せられた仕事や行事をさぼらなければそれでいいといういじけた根性に馴染んでしまった。
言葉を代えると、社会の基本的な道徳など治める側が身に付ければよいもの。農民は政府から与えられた田畑を耕し、商人は算盤でもちまちまやっていれば、何も問題ないという考え方が身についてしまったのだ。

その上、明治維新と文明開化が煽る利益追求の欲望が日本人の商業道徳の低下に追い打ちをかけたというのが、渋沢の見立てでした。

豊かさと地位とは、人類の性欲とでもいうべきものだが、初めから道徳や社会正義がないものに対して、利益追求の学問を教えてしまえば、薪に油を注いでその性欲をあおるようなもの。結果ははじめからわかっていたのだ。

イギリスで受けた苦情は江戸時代から続けた流れの帰結。
この状況を何としても変えなければならない。

信用を大切にした渋沢栄一

出典:NHK

渋沢は信用と商業道徳の重要性を力強く訴えていくことになります。

良き行動の習慣化

良き行動の習慣化

出典:NHK

良き行動のルールは文化、年齢、人、局面が違うと異なっていてしまいます。

明治は江戸時代以来の価値観と近代の価値観がぶつかり合った時代なので、人によって何がいいか悪いか大きく違う時代。そういうところでどう道徳を見つけていくのかは渋沢栄一のテーマでした。

多様な価値観が存在する現在の社会で、信頼関係を築くのは、大切だけど、難しいことです。
渋沢の”論語と算盤”中の言葉の中にそのヒントを探しましょう。

およそ人として社会で生きていくとき、常識はどんな地位にいても必要であり、なくてはならないものである。

では、常識とはどのようなものなんだろう?

わたしは次のように解釈する。

「智、情、意」の3つがそれぞれバランスを保って、均等に成長したものが完全な常識であろうと考える。

さらに言葉を代えるなら、ごく一般的な人情に通じて、世間の考え方を理解し、物事をうまく処理できる能力が常識に他ならない。

常識とは如何なるものか

 

引用:”論語と算盤”解説サイト

 

他者に納得してもらうにはロジック「智」が必要。しかし同時に感情面「情」での納得が得られなければ反発を受けてしまします。さらにそもそも何がしたいのかというベクトル「意」が合っていなければ、説得することはできないでしょう。

智・情・意、この3つのバランスを取りながら他者との合意、つまり常識を形づくることが、信頼ある社会には不可欠と渋沢は考えていました。

常識を作り、常識に基づいた良い行動のルールを見つけ、それを習慣とする。それが道徳の獲得につながるのです。

SDGs

出典:NHK

守屋先生「これからSDGsを本気で考えている人たちが労働人口の半分以上になっていくはず。わたしはそういう人の為に会社を経営していきたいとおっしゃってる社長がおり、未来を見据えていくことで”論語と算盤”が上手くもうちょっとミックスしていくかもしれないと思います」

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渋沢の”論語と算盤”には現実と同じように矛盾があるからドラッカーが評価した

渋沢の考える信用される人

出典:NHK

志の方がいかに真面目で、良心的かつ思いやりにあふれていても、その振る舞いが鈍くさかったり、わがまま勝手であれば、手の施しようがない。
これに引き換え、悪賢い人や表面をうまく取り繕う人は、比較的成功し、信用される場合が出てきてしまうのだ。

 

1回目の話

出典:NHK

実は、「100分de名著」渋沢栄一の”論語と算盤”の第1回の放送では「結果より生き方」が大事とこの番組で紹介しています。しかし、この上記の話は結果を出さないと信用されない旨なので、矛盾しているのです。

現実社会は矛盾だらけ

出典:NHK

“論語と算盤”のおもしろいところで、現実社会は矛盾に満ちています。矛盾を含む思想だからこそ、矛盾している現実を逆に良くすることができるという側面を持っているのです。
矛盾していない思想を社会に押し付けてしまうと社会が壊れるんです。

ドラッカーが嫌った3人

出典:NHK

ピーター・ドラッカーという有名な社会学者・経営学者が嫌いだった人が3人いるんです。ヒトラー、スターリン、毛沢東です。
この3人の共通点は1つの原理を社会に押し付けて、例外とする者を皆殺しにしていった人たちなんです。
1つの原理では社会は覆い尽くせない

ドラッカーは渋沢を高く評価

出典:NHK

逆にドラッカーは渋沢栄一を高く評価しています。
「論語」と「算盤」という対極的なものを持つ思想だからこそ社会全体を包摂することができる

そして、守屋先生も「このことが渋沢栄一の論語と算盤の考え方の強みだと考えます」

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最後に

常に現実を今を主体となって生きてきた渋沢栄一が本当に凄いところは、ドラッカーに評価されたこともそうですが、経済界を引退した後も社会福祉活動は死ぬまで続けたということです。

福祉事業家渋沢栄一については2019年9月4日、NHK「英雄たちの選択」で放送された内容を「福祉家渋沢栄一、弱者を切り捨てる言葉”惰民”を認めず、「論語と算盤」を貫いた生涯を日本人として知っとくべき!」で記事にしていますので、ぜひご一読いただければ。

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1970年長崎県五島生まれ 現在、家族は妻、息子の2人 品川区在住、品川区勤務 好きな作家:池井戸潤、伊坂幸太郎、真山仁 好きなドラマ:救命病棟24時、医龍 好きな映画:グローリー 好きな女優:石田ゆり子、イングリッド・バーグマン 好きなスニーカーメーカー:PATRICK