2019年9月29日(日)の「サイエンスZERO」で、自己治癒するコンクリートとセラミックスが紹介されており、コンクリートに関しては先ほど記事にしましたので、もう一つのモノ、自己治癒セラミックスについて。
現在の飛行機のジェットエンジンは金属で作られてます。
その一部、熱風を排気して動力に変えるタービンブレードに軽くて強い自己治癒素材のセラミックスを導入が実現すれば自動車や発電所の部品にも応用でき、大幅なCO₂削減につながると期待されているのです。
出演されていた国立研究開発法人物質・材料研究機構の長田俊郎さんは1000℃で1分以内で自己治癒する材料を作っているということです。
小島瑠璃子さんも「1分以内ですか?」と驚いた様子。
自己治癒セラミックスは現在タービンブレードに使われているニッケルなどの合金の重さの3分の1の軽さ。
しかし、軽くはなるが、小石や金属片などが当たると破損しやすく、短時間での修復改良が必要だったのです。
長田さんたちが、どうやって短縮できたかが紹介されてましたので、記事にまとました。
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目次
自然治癒セラミックスで大幅なCO₂削減が!
自己治癒セラミックスの修復時間の短縮
1995年の自己治癒セラミックスは
横浜国立大学安藤柱名誉教授らは1995年、アルミナ(酸化アルミニウム)に炭化ケイ素を混合したセラミックスで亀裂が修復することを発見しました。
しかし、当時は詳しい仕組みが分からず、約1000度では修復に1000時間程度かかっていました。
どういうことで時間短縮ができたのか?
アルミナの役割を知ることで
物材機構の長田俊郎主任研究員らは、特殊な電子顕微鏡で修復過程を観察したところ、亀裂に入った空気の酸素と炭化ケイ素が反応し、ドロッと溶けた二酸化ケイ素を生成していました。
二酸化ケイ素とアルミナの混合液体がドロッとしたガラス状になり、亀裂を埋め、結晶化して修復し、強度が回復するメカニズムを知ることができたのです。
今まで、亀裂治癒の速度を上げようとするには炭化ケイ素のサイズを小さくしたり、たくさん入れたりするという発想だったのですが、アルミナが非常に重要な役割を果たしてることを知ることができたことが大きな前進につながりました。
アルミナと同じ役割を持つものを周期表上で探し、さらにその中で1000℃でも早く治癒する物質を探索していくことに。
ガラス転移温度とはその℃数以上になると物質がドロッとなる温度のことです。
二酸化ケイ素は1000℃以上、アルミナで1000℃前後なので、ドロッとなるまでに時間がかかったのです。
ということで、酸化マンガンを見つけたことが修復時間短縮に大きくつながったのです。ほんの少し(0.1~0.2%程度)でも酸化マンガンを入れてあげると新たなガラスの性質になって、より低い温度で亀裂を修復しやすくなるのです。
酸化マンガンの配列の仕方で
もう一つ、二酸化ケイ素とアルミナの界面にだけ網目状に少ない量の酸化マンガンを配置できたことなのです。その発想は人間の骨が治る仕組みから来たものだったのです。
骨にひびが入ると血液が流れ込み、すみずみまで満たします。二酸化ケイ素が亀裂を埋めた状態と同じです。
仮骨というものができると、骨細胞間のネットワークを使って治癒物質を運びひびを修復するのです。
長田さんたちは、骨細胞間のネットワークを参考に、セラミックスを焼き固める温度などを工夫し、酸化マンガンを網目状に配置することができたのです。
結果、微量の酸化マンガンを加えると修復を促進でき、約1000度では最短1分で亀裂を修復できるようになったのです。
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自然治癒後、修復した箇所は強度が増す
普通に考えたら、治癒しても亀裂が入った箇所の方が弱いはずですが、事故治癒セラミックスは逆なのです。
セラミックスの強度は、実は結合の状態というよりも中にある小さな欠陥の大きさで決まるため、亀裂が入いるとその亀裂が一番大きな欠陥ですが、修復すると、他の箇所の欠陥が大きくなるので、他の箇所より強度が優るようになるのです。
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最後に
「タービンブレードを全部セラミックスに替えると、軽量化でエンジンの燃費がだいたい15%ぐらい改善されると試算されてます。世界で1年間に30兆円から40兆円分の燃費が改善できることになるのです」と長田さん。
これが、世界中の自動車や発電所で導入されれば、コストダウン以上に大幅なCO₂削減になることは願ってもないことです。
気候行動サミットで、 グテレス国連事務総長が締めくくった「77カ国が2050年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにすることを約束した」というその約束に向けて力を入れていかなければならないことの一つに違いないので、実用化に期待したいですね。
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